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男女共同参画・
少子化

Gender equality,
the declining birthrate

男女共同参画・少子化 男女共同参画・少子化

顕彰結果

令和4年度男女共同参画・少子化関連研究活動の支援に関する顕彰事業

2022.12.09

第13回(令和4年度)男女共同参画・少子化関連顕彰事業 選考結果について

当基金の選考委員会の結果に基づき、受賞者を決定いたしました。
本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すことを目的としております。

1. 顕彰の趣旨

本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進及び少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すものです。

2. 選考委員

(1) 恵泉女学園大学 学長 大日向 雅美氏 (2) 関西大学 人間健康学部 教授 山縣 文治氏 (3) 中京大学 現代社会学部 教授 松田 茂樹氏 (4) 公益社団法人 程ヶ谷基金 理事長 相原 元八郎

3. 選考結果

(1) 論文部門

①優秀賞
国立高等専門学校機構 鳥羽商船高等専門学校 准教授 深見 佳代氏
「Gender Challenges Faced by Female Physicians in Sweden: A Literature Review」
②奨励賞
(ア) 東京大学大学院人文社会系研究科 博士課程 江島 ゆう花氏
「ケアラーの感覚的活動への支援をめぐるケアワーカーの解釈と実践
― 産後ドゥーラの母親支援を事例に ―」
(イ) 日本女子大学大学院 人間社会研究科 現代社会論専攻 博士課程後期2年 藤原 眞緑氏
「子育て世帯夫婦における母親の就業と父親の家事・育児参加」
(2) 活動部門

①優秀活動賞

特定非営利活動法人新座子育てネットワーク(代表理事 坂本 純子氏)(埼玉県新座市在)
「地域における父親支援力育成プロジェクト」

②活動賞

(ア) ぎふママカレッジ(代表 大西 ますみ氏)(岐阜県岐阜市在)
「“ワタシ”を見つけるママのための交流&体感型スクール」
(イ) 特定非営利活動法人manma(代表理事 越智 未空氏)(東京都豊島区在)
「プレパパプレママ世代の若者・子育て家庭へのライフキャリアデザイン支援」

③奨励賞

一般社団法人りとりーと(代表理事 兼子 佳恵氏)(宮城県石巻市在)
「性別や生まれ育った環境にかかわらず差別されることなく生きられる地域を目指す」

4. 顕彰者応募作品等の概要及び選考理由

〔論文部門〕

優秀賞
国立高等専門学校機構 鳥羽商船高等専門学校 准教授 深見 佳代氏
「Gender Challenges Faced by Female Physicians in Sweden: A Literature Review」
(ア)応募作品等の概要
スウェーデンの女性医師率は5割であるが、外科系は少ないなど、古典的なジェンダーバイアスが残っている。本研究では、スウェーデンの女性医師が経験するキャリアの障壁を明らかにし、この不平等を克服するために今後必要と思われる方策を示唆することを目的として、文献調査を実施した。その結果、医学部入学当初にはなかった性差別的経験が、学年が上がり臨床実習が始まると増加し、職に就くと、職場文化、賃金、役職、社会保障、健康などの面で顕著になることが明らかになった。本研究を通じて、女性の数が増えることは必ずしも男女差別の撤廃を意味せず、女性排除の文化そのものにアプローチすることが重要であることを説いた。
(イ)選考理由
ジェンダー先進国という評価の高いスウェーデンにおいてもなお、職種により女性排除の文化があるという興味深い研究結果を示した。また、日本に伝わり難い海外の論文を丹念に読み込んで、英語で発表している点も高く評価された。他方で、現場でのインタビューなど、まだまだ切り込む余地もあり、今後、さらに研鑽を深め、スウェーデンで得られた知見を日本に活かす取組みへの発展が期待される。
奨励賞
① 東京大学大学院人文社会系研究科 博士課程 江島 ゆう花氏
「ケアラーの感覚的活動への支援をめぐるケアワーカーの解釈と実践
― 産後ドゥーラの母親支援を事例に ―」
(ア)応募作品等の概要
本稿は母親の「感覚的活動」に関わるケアラーである産後ドゥーラに着目し、ケア責任への支援の方途を精緻化したものである。感覚的活動に関わる支援とは、母親の意向をよく聞き、最大限尊重し、ケアの判断を促す言葉や情報を返し、感覚的活動の修正ケアニーズヘの気づきを促す支援であることを確認した。また、実際の支援では、①母親が行った感覚的活動を理解し従う、②母親が見つけたケアニーズに対し、共に感覚的活動を行う、③母親にケアニーズを提案し、共に感覚的活動を行う、という関わりを確認した。
(イ)選考理由
産後ドゥーラに焦点を当て、可視化し難い「感覚的活動」に着目している点が、ユニークであり評価された。また、一次データの収集が容易ではない中、細やかなコミュニケーションを重ねて、産後ドゥーラへ直接的インタビューを行った努力が評価された。なお、自身の出産、子育て、親の介護、自らの闘病等による休学を挟みながらも、研究への熱意を絶やすことなく、大学院博士課程に在籍し、努力を続けている姿勢に感銘を受けた。今後のさらなる研究に期待したい。
② 日本女子大学大学院 人間社会研究科 現代社会論専攻 博士課程後期2年 藤原 眞緑氏
「子育て世帯夫婦における母親の就業と父親の家事・育児参加」
(ア)応募作品等の概要
本研究では「島根県の子育て期の女性の仕事と生活調査」(島根県立大学2018年)のデータを用いて、子育て世代のa.父親の家事・育児参加およびb.世帯の家事・育児時間規模を被説明変数とし、「夫の労働時間」、「妻の就業形態」、「夫の性別役割分業意識」を説明変数として研究を進めた。説明変数に関しては交互作用に着目して分析を行った。その結果、妻が専業主婦で夫が長時間労働している世帯では、伝統的な性別役割分業意識を持つ夫の方がそうでない夫にくらべて家事・育児時間が長いという興味深い知見も得られた。
(イ)選考理由
本テーマは先行研究も多くある中で、研究方法、分析は誠実かつ丁寧であり、修士論文としては、とても努力しており、良くまとめられていると評価された。また、結論も今までの伝統的意識や常識と異なっており、面白い。「性別役割分業意識」は女性の社会進出が進んだ現代においても根強く残っており、少子化解決に向けての課題ともいえ、今後は全国的な調査、論文への発展を期待する。

〔活動部門〕

(1) 優秀活動賞

特定非営利活動法人新座子育てネットワーク(代表理事 坂本 純子氏)(埼玉県新座市在)
「地域における父親支援力育成プロジェクト」
(ア)応募活動等の概要
育児介護休業法が改正された2021年度を父親支援の重要な年と位置付け、若手職員が中心となり、「地域における父親支援力育成プロジェクト」を全国各地と地元の子育て支援者を対象に自主事業として展開、本年もその取り組みの強化をしている。2004年から取り組んできた父親支援の知見と実践、研究、研修ノウハウを活用し、最前線の父親研究者たちの協力を得て、セミナーやフォーラム、実践プログラム研修、啓発ポスター・資料・カナダの父親支援者のテキストで手引きとして活用されているDadCentral発行の「My Dad Matters」日本語版の提供などに取り組んでいる。全国を対象に5回の集い・フォーラム・研修会を開催し、約300人が参加している。
(イ)選考理由
子育て支援・父親支援において、20年以上の歴史があり、既に社会からも高い評価を受けて活躍している団体である。2021年に育児介護休業法が改正され、男性の育児休業の取得が推進される世になり、今後ますます父親支援のニーズは強くなると思われる。その中で、全国の子育て支援者を対象に、父親研究者ネットワークを活用し、フォーラムやセミナーを通じて、草の根から父親支援をする当団体の活動の評価は高く、日本の父親支援をリードする存在として、今後の発展が期待される。

(2) 活動賞

①ぎふママカレッジ(代表 大西 ますみ氏)(岐阜県岐阜市在)
「“ワタシ”を見つけるママのための交流&体感型スクール」
(ア)応募活動等の概要
多くのママたちはこのコロナ禍で交流が減り、更に孤立し自信を失っていく傾向にある。ママたちが孤独な育児から解放され、人と触れ合い交流することで心を軽くしてもらいながら、ママからワタシモード(自分)に切り替え、自分の心と体の感覚に気づき、なりたいワタシを形成していく短期スクール「ワタスク」を開校している。それは、ママでも妻でもない、ワタシの感覚を呼び覚ます、”ワタシ”を見つけるママのための交流&体感型スクールである。
(イ)選考理由
“ママたちをひとりにしない、ひとりにさせない”をスローガンに、子育てで孤立する親が多い現代社会において、気軽に相談できる場所やコミュニティを提供している点が評価された。中でも、「母親自身」に焦点を当て、自身のケアは二の次になってしまう母親に向けて、「交流&体験型スクール」として趣味や体を動かす等の解放の場を提供している点がユニークである。その他、ママカレcafe(お話会)、講座・ワークショップ、ワクドキマルシェ(イベント)等の様々な活動も評価された。
②特定非営利活動法人manma(代表理事 越智 未空氏)(東京都豊島区在)
「プレパパプレママ世代の若者・子育て家庭へのライフキャリアデザイン支援」
(ア)応募活動等の概要
家族留学事業は、若者が子育て家庭に1日体験訪問する家族留学プログラムである。
大学生~若手社会人までのプレママ・プレパパ世代が、子育て家庭の1日に同行し、子供との触れ合い体験/多様なロールモデルとの出会いを通して、「結婚・子育て」と「働く」の両面から自身のライフキャリアと向き合う体験型のプログラムとなっている。対面の際は受け入れ家庭の自宅及び近隣の公園等にて、オンラインの際はZoom等のWEB会議ツールを使用し、家族留学を実施している。
(イ)選考理由
子育て家庭に1日留学をする「家族留学の運営」というユニークな発想を実現している。少子化や核家族化の進展により、ロールモデルとなるような家庭が身近にない現代社会において、今後の活動の拡がりが期待できる点が評価された。様々な家庭の在り方を実際に見て体験することで、性別による「無視式の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」の変革にも資するものであると評価された。

(3) 奨励賞

一般社団法人りとりーと(代表理事 兼子 佳恵氏)(宮城県石巻市在)
「性別や生まれ育った環境にかかわらず差別されることなく生きられる地域を目指す」
(ア)応募活動等の概要
「対話を通じた市民力の向上」を旗印に、①性別や情報格差の解消、②学びあいの場づくり、③メンタル予防ケア事業(相談窓口の拡充)、④ぴあサポータ育成/サポート体制の構築、⑤DV被害者家族/機能不全家族向けのシェルターの設置、⑥パントリー事業等の多様な活動を行っている。東日本大震災被災者の間に広がるDV被害や子育ての悩み等に対し、心のケア、一時保護するシェルター、食品・日用品を配布したり、ストックしたりするパントリー事業、活動に興味のある地域住民が参加できる「学び合う場」や「交流の場」を設けている。
(イ)選考理由
東日本大震災で被災した石巻市を中心に、地域のDV被害者や機能不全家族の救済、近隣トラブルの相談等まで、幅広い内容の相談に応じている。その中にはウクライナ人避難者も含まれるが、助けを求める人に対し、「支援される」だけではなく、互いに助け合うことや学びの場を設け、協力、共生できる環境作りを目指しており、将来自立できるように導く姿勢から、当団体の被害者に対する真の思いやりが感じられ、その努力が評価された。