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男女共同参画・
少子化

Gender equality,
the declining birthrate

男女共同参画・少子化 男女共同参画・少子化

顕彰結果

令和2年度男女共同参画・少子化関連研究活動の支援に関する顕彰事業

2020.12.11

第11回(令和2年度)男女共同参画・少子化関連顕彰事業選考結果について

当基金の選考委員会の結果に基づき、受賞者を決定いたしました。
本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すことを目的としております。

1. 顕彰の趣旨

本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進及び少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すものです。

2. 選考委員

(1)    恵泉女学園大学 学長 大日向 雅美氏
(2)    お茶の水女子大学基幹研究院 教授学長補佐 永瀬 伸子氏
(3)    中京大学 現代社会学部 教授 松田 茂樹氏
(4)    公益社団法人 程ヶ谷基金 理事長 相原 元八郎

3. 選考結果

(1) 論文部門

①優秀賞
(ア) 西武文理大学 サービス経営学部 健康福祉マネジメント学科 専任講師 大日 義晴氏
「里親にとって里子は「家族」か?」
(イ) 立教大学 コミュニティ福祉学部 コミュニティ政策学科 助教 跡部 千慧氏
「戦後女性教員史-日教組婦人部の労働権確立運動と産休・育休の制度化過程-」
②奨励賞
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 国際協力学専攻 博士後期課程2年 中村 信之氏
「Impact of Foreign Domestic Workers on the Fertility Decision in Households : Evidence from Hong Kong(邦題:出稼ぎ家政婦が世帯の出生選択にもたらす影響:香港のエビデンスを基に)」
(2) 活動部門

活動賞

(ア) NPO法人 Mama's café【Mama’s基金バルーンチーム】 (チームリーダー 宇川 幸子氏)(岐阜県多治見市在)
「クラウドファンディングや寄付付きバルーン等を活用したMama's基金の運営」
(イ) 特定非営利活動法人e子育てセンター(代表理事 森崎 智美氏)(広島県広島市在)
「IT(ホームページ)を活用した子育て支援や24時間対応可能な一時保育事業」
(ウ) 一般社団法人男女共同参画地域みらいねっと(代表理事 小山内 世喜子氏)(青森県青森市在)
「男女共同参画の視点を取り入れた防災教育と女性リーダーの育成等の活動」
(エ) NPOフュージョン長池(理事長 田所 喬氏)(東京都八王子市在)
「子どもと自然と地域をつなぐパークキッズレンジャー等の活動」
(オ) 特定非営利活動法人森の劇場(代表理事 深沢 さやか氏)(山梨県南アルプス市在)
「演劇創作を通じた地域と「繋がる」活動や私的学童「じいじの家」の開催等の活動」
(カ) NPO法人育ちあいサポートブーケ(代表理事 藏原 亜紀氏)(兵庫県川西市在)
「子育て中の母親が担い手となる地域イベントやサークル活動等の運営」

4. 顕彰者応募作品等の概要及び選考理由

(1) 論文部門

①優秀賞
① 西武文理大学 サービス経営学部 健康福祉マネジメント学科  専任講師 大日 義晴氏
「里親にとって里子は「家族」か?」
(ア)応募作品等の概要
近年、里親にとって里子が「家族」であるかどうかについて明示化されていない点に着目し、養育里親における家族認知の実態とその規定要因を明らかにすることを通じて、わが国の養育里親の関係構造とその課題を析出することを目的とし、計量的分析を行った。その結果、わが国では排他的な親子関係モデルが前提とされており、もしケアラーが途中で交代する場合は、直前の親子関係が断絶され、標準的家族に近似した新たな親子関係を再形成することが求められることが示唆された。
(イ)選考理由
里親制度という、現代の日本が抱える大きな家族の課題を題材に、その計量的な分析を行うという大変難しい分野にチャレンジし、ユニークな視点で展開されている。用いられているマルチレベル分析の技量レベルも高く、里親制度が福祉と家庭の合間にあって、矛盾を含む中で、それを客観的に実証しているところが高く評価された。
② 立教大学 コミュニティ福祉学部 コミュニティ政策学科 助教 跡部 千慧氏
「戦後女性教員史-日教組婦人部の労働権確立運動と産休・育休の制度化過程-」
(ア)応募作品等の概要
産休代替制度・育児休業制度という、結婚・出産後の女性の就労継続を支える制度の実現を目指した日本教職員組合婦人部の要求運動の過程を、当時の女性運動を牽引した言説、政党の動向、他の運動の到達点との関係から再構成し、歴史分析を行った。その結果、①この運動が組合員以外の女性教員らを含む雇用形態や階層差を超えた広範な連帯であったこと、②「主婦化」が強調される時代に、女性職員が結婚・出産後の就労継続という生き方を求め、育児休業制度を実現してきた過程を明らかにした。
(イ)選考理由
日教組婦人部の活動の記録資料や当事者への丹念な聞き取り調査を通じ、詳細が未解明とされてきた産休代替制度・育児休業制度の法制化の過程を、明確に描き出し再構築した。多くの先行研究をまとめあげた重厚な研究成果であり、今日の日本の男女共同参画・少子化を考える上で一つの参考となる歴史研究として高く評価された。
②奨励賞
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 国際協力学専攻 博士後期課程2年 中村 信之氏 「Impact of Foreign Domestic Workers on the Fertility Decision in Households : Evidence from Hong Kong (邦題:出稼ぎ家政婦が世帯の出生選択にもたらす影響:香港のエビデンスを基に)」
(ア)応募作品等の概要
少子化の解決策として、育児や家事を代行する出稼ぎ家政婦(Foreign Domestic Workers=FDW)の雇用が挙げられるが、近年の研究ではFDWの直接的影響や異質性の特定、結果の一般化は困難とされている。本研究では、香港の国勢調査の家計データを用い、公共住宅に関連する操作変数法による分析を行うことで、FDW雇用が多産傾向や次子出産の早期化傾向をもたらすことを明らかにし、女性の社会進出や国際的な労働市場開放が進む時代の少子化対策に貢献することを導き出した。
(イ)選考理由
筆者は、香港の国勢調査の家計データを用いて、操作変数法という難易度の高い手法により工夫を凝らした分析を行い、その実証的な分析により出稼ぎ家政婦の雇用と少子化との関係性を明らかにしたことが評価された。

(2) 活動部門

活動賞
① NPO法人 Mama's café【Mama’s基金バルーンチーム】(チームリーダー 宇川 幸子氏)(岐阜県多治見市在)
(ア)応募活動等の概要
転勤族の増加・核家族化・ベッドタウン化等により、「孤独な子育て」と「子育て困窮家族」が問題となっている岐阜県多治見市において、独自の基金「Mama's基金」を立ち上げ、クラウドファンディングを通じて、多くの困難を抱えた家庭の支援を行ってきた。さらに今回、寄付付きのバルーンを開発・販売し、売上の一部を基金の資金とするとともに、「子どもの貧困」問題に興味をもってもらうきっかけとした。
(イ)選考理由
20年以上の活動を続ける子育てNPOであり、子育て困窮家族等、深刻な地域の問題に取り組むとともに、今回のポイントの「バルーン基金」など、活動資金の確保と産業空洞化への対応の両面をもつ新しいモデルケースを示した点が評価された。
② 特定非営利活動法人e子育てセンター(代表 森崎 智美氏)(広島県広島市在)
(ア)応募活動等の概要
子育て世代の孤立を防止し、安心して子育てができる地域づくりをめざし、IT(ホームページ)を活用した子育て支援活動を開始し、保育サポート事業(24時間対応の子供の一時預かり)や常設のひろば事業に取り組み、保育サポーター養成講座やサポーター研修、保育のコーディネートを実施するなど、地域と子育て世代をつなげる役割を担い、子育て不安や困りごとのある親をサポートする活動を続けている。
(イ)選考理由
ITを活用した子育て支援に先駆けて取り組むとともに、24時間一時保育事業などの幅広いサポート体制を充実させ、地域の子育て世代の孤立化の防止や安心して子育てのできる地域づくりを推進するなど、大きな成果を上げている点が評価された。
③ 一般社団法人男女共同参画地域みらいねっと(代表理事 小山内 世喜子氏)(青森県青森市在)
(ア)応募活動等の概要
東日本大震災時、避難所運営において男女共同参画の視点がなかったことによる教訓を活かし、将来、地域防災の担い手になる青森市内の中学生に対し、「防災教育プログラム」として、復旧・復興における男女共同参画の視点の必要性及び日常からの取組みが重要であることを伝えている。地域防災力の向上、安心して生活できるまちづくり、女性防災リーダーの育成及び地域のネットワークづくりの一翼を担っている。
(イ)選考理由
女性の防災リーダーを育成するという今日そのあり方が問われている問題に取り組み、学校、地域、行政と連携しながら、男女共同参画の視点を取り入れた防災文化の定着を目指しており、地域において貴重な活動を行っていることが評価された。
③ 南アルプス LOCO (代表 新津 幸氏)(山梨県南アルプス市在)
(ア)応募活動等の概要
3人の「田舎に暮らす女子クリエーター」の等身大の活動により、みんなが楽しく暮らせるまちづくりにチャレンジ。市の広報誌に女性目線の紹介記事「LOCOMAGA」を掲載し、地域の人・もの・店などをつなぐ役割を果たしている。また、特に過疎化の進んだ地区で、地域伝承を踏まえた「和ロウィン・パーティー」などの親子イベントを企画・実施するなど、人と人とをつなげ、人が集まる地域づくりに貢献している。
(イ)選考理由
3人という小規模団体でありながら、地域と密着した町おこしやPR活動など、市民目線での活動が、地域で活躍する女性のロールモデルとなっている。過疎化が進む南アルプス市に元気を与える、アイデアいっぱいのハッピーを届ける活動が評価された。
④ NPOフュージョン長池(理事長 田所 喬氏)(東京都八王子市在)
(ア)応募活動等の概要
「パークキッズレンジャー活動」は、子どもたちが公園で生物調査や環境保全活動を体験することで、子どもたちの豊かな感性を育み、また、公園管理活動のサポートや実体験を通じて、子どもたちの“生きる力”を高めることを目的としている。子どもたちが地域活動の担い手として主体的に力を発揮し、共に地域の未来を築くことで、子どもたちとその家族が地域で輝ける“居場所”としての機能も果たしている。
(イ)選考理由
子どもたちが自然観察、自然保護等を学ぶ一方で、公園管理の仕事の一端を担うことで主体性を育み、豊かな感性と生きる力を身につけることが期待され、また、親子が自然の中で共に成長する機会としても機能しうる活動であることが評価された。
⑤ 特定非営利活動法人森の劇場(代表理事 深沢 さやか氏)(山梨県南アルプス市在)
(ア)応募活動等の概要
子供から大人まで男女幅広い世代、職業、様々な考え方や経験を持つ人々が集い、お互いの違いや共感性、表現の楽しさや自由不自由さ、面白さを体感しながら、演劇創作活動や、加速する少子化の一端でもある「孤育て」をサポートする私的学童「じいじの家」の開催など、地域密着、多世代、多ジャンルの関わりを強みとした「演劇創作活動」と「子育て支援」の合体型スタイルの活動を行っている。
(イ)選考理由
俳優など様々な立場・年齢の人との関わりにより多様な価値観に触れ、地域を巻き込んだ様々な取組を通じ、子どもたちが自主性を確立し、コミュニケーション能力を向上させることが期待できるような、多彩な活動を行っていることが評価された。
⑥ NPO法人育ちあいサポートブーケ(代表理事 藏原 亜紀氏)(兵庫県川西市在)
(ア)応募活動等の概要
様々な事業を通じて子育てする女性をエンパワメントし、母親であると共にひとりの女性として、その人らしく心豊かに生きることを応援する。子育てひろば、親子の居場所、子育て当事者が企画運営の担い手になる地域イベント、情報誌づくり、サークル活動、「地域子育て支援拠点」の運営等に取り組み、子育て中の女性が主体的に力を発揮する機会を提供し、支援の受け手・担い手を行き来することをサポートしている。
(イ)選考理由
活動内容は多岐にわたり、多くの来場者を記録したファミリーハロウィンなど子育て中の女性が企画運営を行う地域イベントの開催、子育てに関する情報誌づくりなどの実績や、川西市の子育て支援分野のリーダー的役割も担っていることが評価された。