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男女共同参画・
少子化

Gender equality,
the declining birthrate

男女共同参画・少子化 男女共同参画・少子化

顕彰結果

平成25年度男女共同参画・少子化関連研究活動の支援に関する顕彰事業

2013.12.13

第4回 男女共同参画・少子化に関する研究活動の支援、並びにこれに関する顕彰事業選考結果について

当基金の選考委員会の結果に基づき、受賞者を決定いたしました。
本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すことを目的としております。

1. 顕彰の趣旨

本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すものです。

2. 選考委員

(1)    独立行政法人 国立女性教育会館 前理事長 神田 道子氏
(2)    恵泉女学園大学大学院 人間社会学部 教授 大日向 雅美氏
(3)    中京大学 現代社会学部 教授 松田 茂樹氏
(4)    公益社団法人 程ヶ谷基金 理事長 廣幡 忠淳

3. 選考結果

(1) 論文部門

①最優秀賞
大阪商業大学 総合経営学部 公共経営学科 助教 佐々木 尚之氏
「JGSS 累積データ 2000-2010 にみる日本人の性別役割分業意識の趨勢―Age– Period-Cohort Analysis の適用―」他
②優秀賞
日本大学 文理学部 非常勤講師 工藤 豪氏
「未婚化・晩婚化行為の地域性―東日本地域を中心にして―」
③奨励賞
(ア) 国立社会保障 人口問題研究所 人口構造研究部 研究員 鎌田 健司氏
「保育施設の適正配置に関する研究―新潟県新潟市を例に―」
(イ) 東京女子大学 研究員 堀 聡子氏
「子育て支援の新展開と家族の境界―『子育てひろば』をめぐる実践に関する社会学的考察―」
(2) 活動部門

活動賞

①子ども夢フォーラム (代表 高木 眞理子氏)
「子ども専用電話相談『チャイルドライン・いしかわ』、大人向け電話相談『パパママ・ホッとライン』等の活動」
②特定非営利活動法人子育てふれあいグループ自然花 (理事長 大脇 治樹氏)
「地域資源を活かした親子ふれあい体験事業、保育所サービスを受けられない家庭に対しての一時預かり等の活動」
③手づくりクッキーおからや (施設長 大森 和子氏)
「障がい者や社会的更生が必要な青少年への自立支援等の活動」

4. 顕彰者応募作品等の概要及び選考理由

(1) 論文部門

①最優秀賞
大阪商業大学 総合経営学部 公共経営学科 助教 佐々木 尚之氏
(ア)応募作品等の概要
日本版総合的社会調査(JGSS)の 10 年分のデータを用い、反復横断調査の特性を利用したマルチレベル・アプローチを活用することによって、日本人の性別役割分業意識の趨勢における年齢・時代・世代効果を検証した。その結果、失われた 20 年と称される近年の雇用状況の不安定さが若年世代、特に正規雇用でない未婚女性の意識の保守化を招く一方で、一手に稼得役割を担える男性が限られていることから、晩婚化・非婚化が避けられない恐れがあることを示唆した。稼得役割や世話役割のような家庭内外での役割を男女が協働で担うことによってリスクを分散し、出産後も雇用が維持される支援体制を築くことが急務であると説いている。
(イ)選考理由
不確実な時代における若者の保守化や、年齢や学歴に関係した女性の初婚率の変化に着目するなど、随所にユニークな工夫が凝らされている。男女の晩婚化・非婚化の現状についてマルチレベル・アプローチやイベントヒストリー分析等の先駆的な分析手 法を用いて4次元的に検証しており、その背景について性別役割分業意識に焦点を当て説得力をもって論じ、負の連鎖が発生していることを論理的に導出している。性別役割分業と少子化を結びつける大変興味深い論文である。
②優秀賞
日本大学 文理学部 非常勤講師 工藤 豪氏
(ア)応募作品等の概要
国勢調査を用いて「男子未婚率が高い地域=東日本」と「女子未婚率が高い地域=西日本」の偏りに注目し、未婚率と人口性比の関係に着目し、分析・考察を行っている。その結果、この地域差は、地域で異なる親の子どもに対する期待(東日本では男子への跡取りとしての期待、西日本では女子への親元で暮らすことの期待)が“人口引き留め要因”として機能し、人口性比のアンバランスをもたらしていることを析出した。その結果、「未婚化・晩婚化」の要因として、きわめて特徴的な地域差が存在し、社会経済的要因のみならず、文化的要因も大きく影響を与えていると結論づけており、「未婚化・晩婚化」の動向は「地域性」という視角からの考察の意義を説いている。
(イ)選考理由
これまで「未婚化・晩婚化」についてはさまざまな領域で研究・議論がなされているが、「地域性」や「地域差」という視角からは、まだ十分な議論がなされていないと考えられる。本論文は、先行研究を踏まえ、なぜ地域差が生じているのか、その要因 を追究している点において貴重な学術研究であるといえる。マリッジマーケットに注目し、地域を絞って研究した点も興味深かった。「未婚化・晩婚化」要因となり得る地域性の考察が、今後の少子化対策として、それぞれの地域の状況や特性に適した対 策支援の基盤となることを期待している。
③奨励賞
①国立社会保障 人口問題研究所 人口構造研究部 研究員 鎌田 健司氏
(ア)応募作品等の概要
認可保育所を対象に、施設の適正配置研究として対象児童分布と認可保育所の配置について GIS(地理情報システム)を用いて、新潟市を事例に保育整備が望まれる地域の特定並びに政策提言を行っている。筆者は保育所の適正配置状況を評価するアクセシビリティ指標を2つの点で改良した。一つは、ある施設を利用した児童は他の施設を利用しないという「競合性」を考慮したこと、もう一つは、施設の定員数と保育所の持つ圏域に即した需要数との需給関係を評価したことである。その結果、今回改良したモデル指標は実際の保育利用率を予測する精度が最も高いことを示した。
(イ)選考理由
第一に地方自治体の保育施設の立地計画に関する緻密な基礎資料を提供していること、第二に評価結果が GIS によって視覚的に捉えられ、住民に対する説明資料として明瞭な結果を提供できること、第三に保育所アクセシビリティ指標を改良することに よって小地域レベルでの保育利用率を予測することが可能になったこと等、政策的意義の大きい研究である。研究結果は、女性の結婚・出産前後での就業継続を可能にする環境の整備につながる可能性を示唆しており、今後も継続的な研究を期待している。
②東京女子大学 研究員 堀 聡子氏
(ア)応募作品等の概要
「子育ての社会化」が進行する際の担い手の問題を「家族の境界」の問題として捉え、それが実践場面においてどのように生成・変容するのかを考察した作品。マクロ面については、児童福祉法を中心とした児童福祉政策を対象とし、その推移をみることで、国の「家族の境界」の捉え方を分析し、ミクロ面については、「子育てひろば(以下、ひろば)」を対象として分析を行った。その結果、「ひろば」が母親同士が社交を通じて共感空間をつくる「母親規範との折り合いをつける場」となっていること、また、そこで活動する男子ボランティアが「近代家族」を特徴づける「性別分業」を戦略的に用いるケアのアクターとしての位置を獲得していることを明らかにした。
(イ)選考理由
筆者は「子育てひろば」での丹念な聞き取りと 2004年~2012年までの参与観察を基に、「ひろば」の意味を社会学的見地から相互行為レベルで詳細に考察した。「子育ての社会化」が簡単には進展しない日本において、ケアを誰がどのように担うのかという問題を「家族の境界」という形で分析し、それが母親規範や母親アイデンティティと深く関連していることを論じ、最終的には孤立した子育てに陥りがちな母親たちへの社会的支援のあり方を問うという課題に踏み込んで考察したことに意義がある。

(2) 活動部門

活動賞

①子ども夢フォーラム (代表 高木 眞理子氏)
(ア)応募活動等の概要
石川県金沢市を拠点として「子どもの声を受けとめ、一人ひとりの気持ちに寄り添うこと」、「子どもからの気づきを大人社会に発信していくこと」を柱に活動している団体。主な活動内容は、子供向けに子ども専用電話「チャイルドライン・いしかわ」の実施、大人向けに「パパ子育て講座」「パパママ・ホッとライン」の実施、講演活動、定期ニュースの発行、ネットワーク活動として各機関・団体との会議に出席、行政の活動にも参加している。
(イ)選考理由
「チャイルドライン・いしかわ」は、子どもの声を聴き、その子の気持ちを受けとめ、寄り添うことを大切にしながら、これまで 9 万件を超える電話を受けてきた。また、親からの相談電話「パパママ・ホッとライン」や「パパ子育て講座」も行い、子どもの気持ちを大人に知ってもらう機会を作る等、大人社会へフィードバックする活動も行っている。このように、子どもたちが住みやすい・生きやすい環境を作るための大人の関わり方について、広く社会に発信し続けていることが評価された。
②特定非営利活動法人子育てふれあいグループ自然花 (理事長 大脇 治樹氏)
(ア)応募活動等の概要
地域資源を活かした体験等を通し、親子で共感できる一日を過ごす「親子ふれあい体験事業」、保育所でのサービスを受けられない家庭に対する一時預かりを自然の中で体験させる「一時預かり・放課後児童クラブ事業」、子育て・不登校相談を受ける「相 談事業」、親子で気軽に遊びに来てもらい、集落のお年寄りとの交流活動も行っている「子育てサロン」等を運営している。地域に密着して活動し、親子と集落のお年寄りとの交流にもなり、お年寄りの生きがいへと繋がっている。
(イ)選考理由
限界集落の高齢者と協力して子ども(親子)に昔ながらの生活を教えるなど、日本文化の継承にもなり、子育て支援のみならず、地域の新たなコミュニティーづくりにも貢献している。自然の中での子育てを通じて、健全な心身を養成するとともに、結果として都会から子育て家族の転入をもたらすなど、地方の過疎化、少子高齢化にも目覚ましい改善効果を提供している。団体の拠点も古民家を改装して利用するなど、朽ち果ててしまいそうなものに、息吹を与えようとしているところも印象的である。
③手づくりクッキーおからや (施設長 大森 和子氏)
(ア)応募活動等の概要
「手づくりクッキーおからや」の母体となる「特定非営利活動法人花の会」は、前身から数えて45周年を迎える団体。手づくりクッキー(おからっきー)の製造販売を通じて、障がい者児や社会的更生が必要な青少年の自立支援を行ってきた。また、家 庭に引きこもっている子どもが社会へ出るきっかけ作りや様々な活動への参加促進、海外の体験事業への推薦とその活動サポートも行っている。被災地の「子ども支援チーム」の事務局も務めるなど、地域で“子どもを守り育てる”活動を続けている。
(イ)選考理由
クッキー製造を通して、障がい者や社会更生が必要な青少年等、幅広い自立支援を長年に亘り、継続的に行っている。クッキー製造以外にも、自立訓練一環として行っている事業も内容が充実している。子どもの世界や今の子どもたちが置かれる現状を伝 える活動を通して、子どもへの理解を促し、地域で“子どもを守り育てる”ということについて問題提起する一方で、今困っている子どもや母親支援も真っ先に行っており、シェルター的な役割を担っているところが評価された。