メニュー

男女共同参画・
少子化

Gender equality,
the declining birthrate

男女共同参画・少子化 男女共同参画・少子化

顕彰結果

令和元年度男女共同参画・少子化関連研究活動の支援に関する顕彰事業

2019.12.13

第10回(令和元年度)男女共同参画・少子化関連顕彰事業選考結果について

当基金の選考委員会の結果に基づき、受賞者を決定いたしました。
本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すことを目的としております。

1. 顕彰の趣旨

本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進及び少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すものです。

2. 選考委員

(1)    恵泉女学園大学 学長 大日向 雅美氏
(2)    お茶の水女子大学基幹研究院 教授学長補佐 永瀬 伸子氏
(3)    中京大学 現代社会学部 教授 松田 茂樹氏
(4)    公益社団法人 程ヶ谷基金 理事長 相原 元八郎

3. 選考結果

(1) 論文部門

①最優秀賞
お茶の水女子大学 基幹研究院 研究員 髙山 純子氏
「子育て期の共働き夫婦による家事のマネジメント:分担と外部化の視点から」
②優秀賞
(ア) 大阪市立大学大学院 看護学研究科 教授 平谷 優子氏
「入院中の病児をもつ家族が看護師に期待する家族支援」及び「相対的貧困世帯の子どもの健康関連Quality of Life」
(イ) 国立成育医療研究センター 室長 加藤 承彦氏
「男性の育児参加が次子の出生に与える影響-三世代同居との交互作用の検討-」
③奨励賞
一橋大学大学院 社会学研究科 博士後期課程 五十嵐 舞氏
「「わたし」が選んだ愛:トニ・モリスン『ジャズ』における愛の選択と自主性」
(2) 活動部門
優秀活動賞
一般社団法人子どもソーシャルワークセンターつばさ(代表理事 紀 奈那氏)(岡山県倉敷市在)
「『倉敷トワイライトホーム』における夜の子どもの居場所づくり事業」

活動賞

(ア) 森のようちえん お山歩隊(代表 湊 千恵氏 )(香川県高松市在)
「自然豊かな里山を利用した『森のようちえん』『親子組』等の子育て事業」
(イ) 特定非営利活動法人クローバ (理事長 島田 貴子氏 )(岐阜県岐阜市在)
「『何かやりたい』『起業したい』という女性のためのスタートアップ応援活動」
(ウ) 南アルプス LOCO(代表 新津 幸氏)(山梨県南アルプス市在)
「『田舎に暮らす女子クリエーター』の地元をちょっとハッピーにする活動」
(エ) 地域子育て支援おいでおいでルーム(代表 伊東 二美江氏)(神奈川県川崎市在)
「『頑張らなくていい子育て』『みんなで支え合う子育て』をめざす親子の居場所提供」
(オ) 森のようちえん虹の森(代表 清水 冬音氏)(宮城県多賀城市在)
「天候に関係なく、森やはらっぱなど自然の中で豊かな感性を育む子育て事業」
(カ) 特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター(子育て支援事業担当マネージャー 香川 恭子氏)(広島県広島市在)
「『企業版ネウボラ』『ばあばのおうち』等、幅広い子育て支援事業」

4. 顕彰者応募作品等の概要及び選考理由

(1) 論文部門

①最優秀賞
お茶の水女子大学 基幹研究院 研究員 髙山 純子氏
「子育て期の共働き夫婦による家事のマネジメント:分担と外部化の視点から」
(ア)応募作品等の概要
日常的に家事を分担している子育て期の共働き夫婦32名に半構造化インタビュー調査を実施し、夫婦の家事分担と家事の外部化に 着目し、家事のマネジメントの実態を明らかにした。家事労働には、目には見えない「思考」や「調整」といったマネジメントの負担が存在しており、本検証によって、夫婦で共にこのマネジメントを担うことは非効率性や衝突をもたらす一方で、実践することにより、家事の「役割交代可能性」及び「協働による夫婦関係の構築」という二つの意味があることを示している。
(イ)選考理由
定量的な調査では導き出せない、家事労働の「思考」や「調整」のプロセスに焦点を当て、近年急速に増える夫婦ともに正社員の世帯への丹念なインタビュー調査を通じて、家事のマネジメントをどのように夫婦で共有するのかを両性の視点から明らかにした点が高く評価された。応募者の研究者としての将来性も期待される論文である。
②優秀賞
① 大阪市立大学大学院 看護学研究科 教授 平谷 優子氏
Ⓐ「入院中の病児をもつ家族が看護師に期待する家族支援」及びⒷ「相対的貧困世帯の子どもの健康関連Quality of Life」
(ア)応募作品等の概要
Ⓐでは、入院中の病児をもつ10家族を対象に半構造化面接調査を実施し、家族が看護師に期待する家族支援として、病棟の人的・物理的環境を整える支援、家族への情報提供、家族を気遣う支援、家族の精神状態を考慮して関わる支援や家族の相談相手になる支援の5カテゴリーを期待しているということを明らかにした。Ⓑでは、小学生及び中学生を対象に、困窮度の高い世帯の子どもの健康関連QOLの特徴を調査した結果、相対的に「学校」に関する項目のQOLが低下しており、ひとり親家族への支援や子どもの学習環境を整える支援、健康を維持・向上する支援の必要性を説いた。
(イ)選考理由
Ⓐ、Ⓑともに、看護師としての実践経験等応募者の経歴に裏打ちされた研究。丹念なインタビュー調査と、大規模な質問紙調査に基づいて、入院や貧困という困難な状況にある子どもやその家族の特徴と支援策を、家族の視点に立って明らかにしており、今後の看護師の家族支援などにおいて、有用性の高い研究である点が高く評価された。
② 国立成育医療研究センター 室長 加藤 承彦氏
「男性の育児参加が次子の出生に与える影響-三世代同居との交互作用の検討-」
(ア)応募作品等の概要
厚生労働省が実施している「21世紀出生児縦断調査」のデータを用いて、第一子が生まれた世帯(約1.8万世帯)と第二子が生まれた世帯(約1.3万世帯)ごとに、「男性が積極的に育児参加した場合、次の子どもが生まれやすいのか?」について分析した。 その結果、育児参加度が低い男性の群と比較した場合、より高い男性の群で次の子どもが生まれる確率が高いことを明らかにしている。また、三世代同居と出生行動との関係については、世帯の子どもの数などの状況によって影響が異なる可能性を示した。
(イ)選考理由
「21世紀出生児縦断調査 」という大規模な縦断データを用いて、男性の育児参加度と次子出生の影響について精緻に検証しており、男性の育児休暇取得や長時間労働の是正などの諸問題への示唆を与える研究であるとともに、様々な条件設定下で更なる知見を得ることができる拡張性のある研究である点が高く評価された。
③奨励賞
一橋大学大学院 社会学研究科 博士後期課 五十嵐 舞氏
「「わたし」が選んだ愛:トニ・モリスン『ジャズ』における愛の選択と自主性」
(ア)応募作品等の概要
米国黒人女性作家トニ・モリスン『ジャズ』(1992)における愛をめぐる選択の行為に関して、主体の自主性と他者性を分析することで、「選択」という行為を通じた、モリスンによる黒人女性の性や親密圏の自由に関する権利の追求について検討している。作品では、単に「選択」という行為を称揚するのではなく、その暴力性も指摘した上で、自由な選択という行為の魅力を認める、黒人女性の権利の獲得を要請すると同時に、権利自体の在り方を問い直すものであることを明らかにしている。
(イ)選考理由
1970年以降もなお解決されていない黒人女性のジェンダーバイアスについて、「選択」の自由と「身体と感情の所有」との関係を明らかにし、現代の私たちに改めて問いかける作品であり、独創的かつ意欲的に研究に取り組んでいることが評価された。

(2) 活動部門

優秀活動賞
一般社団法人子どもソーシャルワークセンターつばさ(代表理事 紀 奈那氏)(岡山県倉敷市在)
(ア)応募活動等の概要
夜をひとりで過ごしている子どもたちなど、原則小学校1年生から高校3年生を対象に、夜の子どもの居場所づくり事業「倉敷トワイライトホーム」を運営している。様々な理由から地域から孤立してしまっている保護者や子どもたち、不登校状態にある子どもたちなど、小・中学校や福祉関係機関等と連携しながら、子どもたちや保護者を取り巻く環境、日々の生活を支えていくための居場所運営、支援活動を展開している。
(イ)選考理由
応募者代表は大学在学中に活動を開始し、地域との連携を図りながら子どもたちの居場所づくりを行ってきた。その活動内容は、若い担い手たちが経済的に困っている家庭や 社会経験の不足した子どもたちの気持ちに寄り添い、地域の課題に正面から向き合うもので、他に類を見ず、毎年着実に成果を重ねていることから、高く評価された。

活動賞

① 森のようちえん お山歩隊(代表 湊 千恵氏)(香川県高松市在)
(ア)応募活動等の概要
「子どもを自然の中でのびのびと育てたい」という保護者の想いで活動を開始し、今年で11年目となる団体。高松市郊外の自然豊かな里山を拠点とし、大人が与えすぎずゆったりと見守り、より良く成長しようとする子ども自身の力を信じて待つことを理念に、スタッフと保護者との協働で運営・保育を行う。活動の軸となる「ようちえん組」の他、「親子組」、「森のがっこう」などそれぞれ特色ある活動を行っている。
(イ)選考理由
長年の同じ場所での活動の中で、地域や周辺住民と良好な関係を築き、延べ1万人近い参加者を集めている。過疎・高齢化の進む地域において、子どもの能力を育みながら親同士の相互協力、地域の世代間交流にも貢献している点が評価された。
② 特定非営利活動法人クローバ(理事長 島田 貴子氏)(岐阜県岐阜市在)
(ア)応募活動等の概要
何かやりたい・起業したいという活躍する女性のためのスタートアップ応援活動として、①各種セミナーや講座の定期開催、②起業したい女性のための情報発信サービスや連携企業への紹介といった支援ネットワークの構築、③「クローバスタートアップガーデン」をはじめ、地域のショッピングモール内に子育て世代を含む女性の活躍支援スペースづくりなどの活動に取り組んでいる。
(イ)選考理由
子育て中も何かをしたいという女性のニーズを的確に捉えて企業に届け、行政の取組を情報発信するなど、地域の企業や行政とうまく連携しながら、積極的に女性活躍のための活動を推進するとともに、地元へも多大な貢献をしているところが評価された。
③ 南アルプス LOCO (代表 新津 幸氏)(山梨県南アルプス市在)
(ア)応募活動等の概要
3人の「田舎に暮らす女子クリエーター」の等身大の活動により、みんなが楽しく暮らせるまちづくりにチャレンジ。市の広報誌に女性目線の紹介記事「LOCOMAGA」を掲載し、地域の人・もの・店などをつなぐ役割を果たしている。また、特に過疎化の進んだ地区で、地域伝承を踏まえた「和ロウィン・パーティー」などの親子イベントを企画・実施するなど、人と人とをつなげ、人が集まる地域づくりに貢献している。
(イ)選考理由
3人という小規模団体でありながら、地域と密着した町おこしやPR活動など、市民目線での活動が、地域で活躍する女性のロールモデルとなっている。過疎化が進む南アルプス市に元気を与える、アイデアいっぱいのハッピーを届ける活動が評価された。
④ 地域子育て支援おいでおいでルーム(代表 伊東 二美江氏)(神奈川県川崎市在)
(ア)応募活動等の概要
「頑張らなくていい子育て」「みんなで支え合う子育て」をめざし、親子のための居場所を提供することを通じて、継続的な子育て支援を行っている 団体。妊娠・出産後・子育て中の母親が、安心して子どもの育児に向き合える【居場所の提供】と、特に満1歳未満の乳児から3歳の子どもに、安心のための【支援】や【必要な情報提供】を行うなど、子育て中の親子にとって安心できる居場所づくりに取り組んでいる。
(イ)選考理由
保育の現場経験のあるスタッフが、安心できる子育てのための情報提供・支援を行っている。専門職である発達心理職を配し カウンセリングを行うなど、専門性も高く、丁寧に、子育てや家族関係等に不安を抱える家庭と向き合う活動が評価された。
⑤ 森のようちえん虹の森(代表 清水 冬音氏)(宮城県多賀城市在)
(ア)応募活動等の概要
宮城県多賀城市、仙台市とその周辺の森やはらっぱなど自然の中で、天候や季節に関係なく、太陽の光を浴びて、雨粒を受け止め、風に吹かれ、めぐる季節とともに、たくさんの命と出会い、 遊び、過ごすことで、豊かな感性を育み、子どもが自分で感じ、考え、主体的に行動できる子育てを目指している。親子で参加できる様々なプログラムを提供し、自然体験活動を基軸にした子育て・保育、幼児教育活動を行っている。
(イ)選考理由
企業が実施する母子家庭対象の森林体験プログラムの現地受入れ団体となるなど、母子家庭に寄り添う姿勢や、転入出の多い仙台市周辺において、親子の孤立や虐待等の防止にもつながるセーフティネットとしての役割も果たしている点が評価された。
⑥ 特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター(子育て支援事業担当マネージャー 香川 恭子氏)(広島県広島市在)
(ア)応募活動等の概要
ひろしまNPOセンターの一事業として、子育てオープンスペース、一時預かり、産後ママの居場所づくり、訪問支援などに取り組む。産後ママに実家のような憩いを提供する「ばあばのおうち」や0歳児のいるパパが子育てに関わりママをサポートできるような企業風土づくり「企業版ネウボラ」の他、育休中のママ の 復帰に向けての不安軽減や復帰後を支援するための情報交換や悩みの共有の場の提供等を行っている。
(イ)選考理由
転入出の多い広島市において、居場所づくり活動にとどまらず、 専門家を配した「企業版ネウボラ」の普及、父親も参加可能なプログラムの実施等、産後の母親に寄り添った幅広い活動を行っており、地域の子育て力の向上に寄与している点が評価された。