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男女共同参画・
少子化

Gender equality,
the declining birthrate

男女共同参画・少子化 男女共同参画・少子化

顕彰結果

平成27年度男女共同参画・少子化関連研究活動の支援に関する顕彰事業

2015.12.11

第6回 男女共同参画・少子化に関する研究活動の支援、並びにこれに関する顕彰事業選考結果について

当基金の選考委員会の結果に基づき、受賞者を決定いたしました。
本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すことを目的としております。

1. 顕彰の趣旨

本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すものです。

2. 選考委員

(1)    独立行政法人 国立女性教育会館 客員研究員(前理事長) 神田 道子氏
(2)    恵泉女学園大学 人間社会学部 教授 大日向 雅美氏
(3)    中京大学 現代社会学部 教授 松田 茂樹氏
(4)    公益社団法人 程ヶ谷基金 理事長 廣幡 忠淳

3. 選考結果

(1) 論文部門

①優秀賞
(ア) アイルランド国立大学ダブリン校 専任講師 小舘 尚文氏
「Japanese Women in Science and Engineering:History and Policy Change」
(イ) お茶の水女子大学基幹研究院 リサーチフェロー 安藤 藍氏
「里親であることの葛藤と対処-家族的文脈と福祉的文脈の交錯-」
(ウ) お茶の水女子大学生活科学部 非常勤講師 山本 千晶氏
「中絶の問題とは何か-『身体』からのアプローチ」
②奨励賞
(ア) 明海大学経済学部 専任講師 佐藤 一磨氏
「結婚すると健康になるのか、それとも健康な人ほど結婚するのか」
(イ) 一橋大学 非常勤講師 大理 奈穂子氏
「What Makes a Mother a Monster? Mrs. Gant’s Grotesque Masculinity and the Cult of Womanhood」
(ウ) リクルートワークス研究所 主任研究員 戸田 淳仁氏
「女性の会社や仕事の状況と賃金に与える影響」
(2) 活動部門

活動賞

① ふくいソフィアの会(会長 太田 幸子氏)
「東日本大震災被災地域居住の女性に対する就労支援及び『女性の働くチカラ発見セミナー』等の開催」
② NPO法人マミーズ・ネット【ポケット倶楽部・マミ茶】(理事長 中條 美奈子氏)
「子育て情報誌【ポケット倶楽部】及び子育てフォーラムの企画・運営を行う【マミ茶】の運営」
③ NPO法人くすくすYOKODASHIチーム(理事長 安田 典子氏)
「『アラフォーママの女子会』と『孫育てサロン』の“横出しサービス”の展開」
④伊那谷あんじゃね支援学校(校長 木下 藤恒氏)
「『あんじゃね自然学校』を支える大人たちの学ぶ場『あんじゃね支援学校』の運営」
⑤ Umiのいえ(代表者 齋藤 麻紀子氏)
「『Umi のいえ』での母子の心身ケアに役立つ講座、語り合いの集い、表現ワークシ ョップ等の提供」
⑥ NPO法人 poco a bocco(代表 寺野 幸子氏)
「“ゆらぎ”を抱える女性たちの“こころ”と“からだ”を支える講座、交流会、フィットネス等の開催」

4. 顕彰者応募作品等の概要及び選考理由

(1) 論文部門

①優秀賞
① アイルランド国立大学ダブリン校 専任講師 小舘 尚文氏
(ア)応募作品等の概要
我が国の理工系(STEM)分野で女性の進出が遅れている理由を、①明治維新から第二次世界大戦前まで(女子高等教育機関の創設)、②第二次世界大戦後から男女雇用機会均等法(EEOL)成立まで(男女平等に対する国際機関の圧力や、社会運動の高 まり)、③EEOL 施行から現在まで(「男女共同参画」概念の具体化)、の3つの期間に区切って分析をしている。数の増加だけでなく、多様なキャリアパスを歩む理工系女性が活躍していること、その取組みを継続することの大切さを強調している。
(イ)選考理由
理工系分野における男女共同参画のこれまでの成果について、客観的な分析を加えるとともに、各国ヒアリングを実施するなど、調査も丁寧に行っており、作品としての完成度が高く評価された。有名な出版社から英文で世界に発信した点も評価された。
② お茶の水女子大学基幹研究院 リサーチフェロー 安藤 藍氏
(ア)応募作品等の概要
近年は児童虐待等の社会問題により、社会的期待が高まっているにも関わらず、日本の里親制度の運用率は低い。「福祉的文脈」と「家族的文脈」が交錯する中で、里親たちが経験する葛藤を「時間的限定性」と「関係的限定性」という新たな視点から分析し、かれらが子供との関係で日常的に経験する葛藤とこれへの対処を描き出した。日本の里親制度に内在する無限定なケアへの期待と関係構築への限定性の狭間で生ずる葛藤を里親の視線で捉え、里親制度をめぐる新しい展望をさぐるものである。
(イ)選考理由
独自性のある2つの視点を明確にしている。里親を行っている方への丁寧なインタビューを通じて、現在の里親制度について考察した労作である。今後、低迷する里親委託の推進や里親支援の実践にも貢献しうるものであり、高く評価された。
③ お茶の水女子大学生活科学部 非常勤講師 山本 千晶氏
(ア)応募作品等の概要
既存の「胎児の生命権」と「女性の自己決定権」という2つの権利アプローチに対して、女性の身体経験に基づく「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康・権利)という、より包括的な権利アプローチを模索するための試論である。妊娠という身体経験を経由することで、女性たちが表現してきた「私の一部」という胎児の描写に、より豊かな意味と可能性を与えることができると主張し、中絶の権利アプローチの新たな意味づけを与えている。
(イ)選考理由
女性の身体経験の側から中絶の権利を「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」という新たな枠組みで捉えなおすことを通じて、ジェンダー視点から身体論を基底とした法的議論へのパラダイム転換を図っており、独自性と新鮮さが高く評価された。
②奨励賞
① 明海大学経済学部 専任講師 佐藤 一磨氏
(ア)応募作品等の概要
『慶応義塾家計パネル調査(KHPS)』を用い、結婚が健康に及ぼす影響についての検証を行った。その結果、①結婚サンプルの方が未婚サンプルよりも結婚以前から健康であり、②結婚前後で主観的健康度、主観的身体指標、主観的精神指標が改善し、③生活習慣の改善が見られ、④健康改善効果については男性の方が女性よりも多くの健康指標で改善し、⑤健康改善効果の背景については、男性では精神面での健康の改善が主な原因であり、女性では生活習慣の改善が主な原因であることを導出した。
(イ)選考理由
これまで日本であまり検証されてこなかった結婚と健康の関係を分析し、検証方法として、最新の計量経済学的手法である Entropy Matching を使用した点が評価された。今後、パネルデータを用いたより高度な研究成果が期待された。
② 一橋大学 非常勤講師 大理 奈穂子氏
(ア)応募作品等の概要
娘を虐待する母であり、フォークナーが「怪物としての母」と表章するガント夫人の「男らしさ」に着眼し、これを、近代社会において母親が担ってきた育児に対する責任と、20世紀初頭に西洋文化を席巻した「女性は邪悪で危険な存在である」という見解の二つの側面から考察している。ガント夫人の「怪物性」は、母として完璧であるよう期待されながら、性的脅威として見られるという、モダニズム期の女性たちの置かれていたダブル・バインド状態の反映であると主張している。
(イ)選考理由
娘を虐待する母を責めるのではなく、シングルマザーを社会的に孤立させ、暴力にすがらざるをえないほどの不安に追い込む文化的な要因を解明することで、娘の立場と母の立場を分断しない、新世代のフェミニズムの示唆に富んだ作品である。
③ リクルートワークス研究所 主任研究員 戸田 淳仁氏
(ア)応募作品等の概要
働く女性の会社や仕事の状況が、雇用形態等によってどのように違うのか、その違いがどう賃金に影響しているのかについて分析を行っている。分析の結果、正社員は、給与や人間関係などが相対的に良好とはいえず、責任や負担のより大きい仕事をこなしており、転勤の有無が給与に影響していることが観察された。一方、非正社員は、能力を生かしている人ほど給与が高いことが判明した。また、雇用形態にかかわらず、「結婚・出産後も続けやすい」環境にいる人ほど賃金が高いことも判明した。
(イ)選考理由
雇用形態として近年増加している「限定正社員」に着目し、女性が希望する働き方によって、賃金が高くなるためには何が求められるかに注目して分析を行っている。シンプルながらも多くのインプリケーションが得られていることが評価された。

(2) 活動部門

活動賞

① ふくいソフィアの会(会長 太田 幸子氏)
(ア)応募活動等の概要
福井生活学習館が主催した「地域の女性リーダー養成のための講座」の修了生が、講座で身に着けた知識を活用して男女共同参画社会の実現に貢献することを目的に発足した団体。平成27年6月20日に公益財団法人ふくい女性財団が開催した「ふくいきらめきフェスティバル2015」におけるワークショップで、福井大学地域科学部高田ゼミの全面的な協力のもと、「流出」の当事者である若者で、県内に留まった大学生7人と、これから進路を考える高校生8人を招き、意見交換を行った。
(イ)選考理由
地域の課題を取り上げ、大学生や高校生といった若い世代を取り入れる工夫をしている。大学と共同で開催したワークショップもユニークな取り組みであり、明確に女性リーダーの養成を目指している点も評価された。
② NPO法人マミーズ・ネット【ポケット倶楽部・マミ茶】(理事長 中條 美奈子氏)
(ア)応募活動等の概要
主に0歳から3歳の子どもを持つ母親が参加し、ママ目線での地域の子育て情報誌を作成する【ポケット倶楽部】、「ママの力で子育て支援」としての「子育てわいわいフォーラム」の企画・運営を行う【マミ茶】の2つの活動を通して、常に若い世代を巻き込み、循環型支援を実現しながらも、そこに男女共同参画の視点を自然なかたちで継続的に伝えている。平成26年度は「3年後の自分にあってみませんか?」というパネルディスカッションを実施。パネリストたちの姿は身近なロールモデルとなった。
(イ)選考理由
20年近くにわたり子育て支援と男女共同参画を推進してきており、子育て中の女性が活き活きと社会参画できる場を実現し、当事者同士の支え合いや子育て支援の循環ができている。子育て中の若い世代を自然なかたちで活動へ取り込む工夫が評価された。
③ NPO法人くすくすYOKODASHIチーム(理事長 安田 典子氏)
(ア)応募活動等の概要
NPO法人くすくすの子育て支援事業のうち独自事業を運営するYOKODASHIチーム。「アラフォーママの女子会」では、若いママと交流を取りづらく、育児の悩みを一人で抱え込みがちな40代前後のママの交流の場を設け、悩みを共有することで、日々の育児ストレスの軽減や自分のくつろぎの時間を提供し、「孫育てサロン」では三世代同居・近居が多く、子どもを祖父母に預けて職場復帰する家庭が少なくない土地柄に応じて、「祖父母と孫だけ」に限定した居心地のいい空間を提供している。
(イ)選考理由
親子ひろば等を運営する中で、行政の一般的な子育て支援の対象からはみ出してしまう人を対象に「横出しサービス」をNPOの独自事業として展開し、継続的に新しい世代を取り込む工夫をしている点が評価された。
④ 伊那谷あんじゃね支援学校(校長 木下 藤恒氏)
(ア)応募活動等の概要
2002年に人口1700人の秦阜村に村と地域のNPOが協働して開校した「伊那谷あんじゃね自然学校」が、2007年に子どもの未来を地域の大人が考え抜く画期的な場として「あんじゃね支援学校」が発足した。過疎農山村で失われつつある「教育の自己決定権」「支え合い・共助の仕組み」を取り戻すことを通じた地域再生の取り組みでもある。小さな山村の住民、行政、NPOと学校が協働して山村が持つ教育力を信じぬき、日本一の学びの村を目指す、小さな村の大きな挑戦である。
(イ)選考理由
村の大人が縦横に手をつなぎ、子どもの健全育成を支えている。世代継承、多様な人々の参画、事業継続性、人づくりの生産性、視察の増加という視点から、地域づくりのモデルとなる取り組みであり、応援したい。
⑤ Umiのいえ(代表者 齋藤 麻紀子氏)
(ア)応募活動等の概要
子育てに役立つ講座、母子の心身ケアにつながる講座、語り合いの集い、表現ワークショップなどを子連れで体験できる場を提供している。また、妊産婦を支える医療者・セラピスト向けにも母乳ケア、不妊、里親、看取りなど様々な勉強会を開催し、女性への支援がより充実することを目指し活動している。また、医師や助産師を招いてのお話会や助産師同士の語り合いの会も定期的に開催しているほか、障がいを持つ子と親のための会も月に1回開催している。
(イ)選考理由
定期開催講座の種類、開催数が多く、継続した活動となっているほか、常に新しい視点で活動を行っている。他地域の人も参加していることや、講座に参加した人が、次は講師として参加するなど、取り組みがユニークな点も評価された。
⑥ NPO法人 poco a bocco(代表 寺野 幸子氏)
(ア)応募活動等の概要
女性は一生のなかで生活環境が大きく変化し、コミュニティから離れることを余儀なくされる場合も多い。常に“ゆらぎ”の中で生きる女性たちが、こころのうちに不安や悩みを抱えたまま生きることなく、人とのつながりの中で、暮らしの満足度や自己肯定感を高めることができる環境づくりが必要と考え、世代を超えたすべての女性を対象に、気軽に単発で参加できる健康づくりや子育てに関する講座や交流会、フィットネスを日々開催している。また、大規模な講演会等を年に数回開催している。
(イ)選考理由
地域密着で、ブログやITを活用しながら、少人数で効率よく大規模な活動を行っている。子連れでも、子連れでない女性も気兼ねなく参加できるよう配慮したり、共感する有資格者を講師に招くことで安価に運営したりしている工夫も評価された。