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男女共同参画・
少子化

Gender equality,
the declining birthrate

男女共同参画・少子化 男女共同参画・少子化

顕彰結果

平成24年度男女共同参画・少子化関連研究活動の支援に関する顕彰事業

2012.12.14

第3回 男女共同参画・少子化に関する研究活動の支援、並びにこれに関する顕彰事業選考結果について

当基金の選考委員会の結果に基づき、受賞者を決定いたしました。
本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すことを目的としております。

1. 顕彰の趣旨

本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すものです。

2. 選考委員

(1)    独立行政法人 国立女性教育会館 客員研究員/前理事長 神田 道子氏
(2)    恵泉女学園大学 大学院教授 学術博士 大日向 雅美氏
(3)    株式会社第一生命経済研究所 主席研究員 松田 茂樹氏
(4)    公益社団法人 程ヶ谷基金 理事長 廣幡 忠淳

3. 選考結果

①最優秀賞
お茶の水女子大学大学院博士後期課程 国際短期大学 専任講師 寺村 絵里子氏
「女性事務職の賃金と就業行動―男女雇用機会均等法施行後の三時点比較―」他
②優秀賞
東京福祉大学短期大学部 こども学科 専任講師 松木 洋人氏
「子育て支援の社会学的インプリケーション」
「ひろば型子育て支援における『当事者性』と『専門性』」
③奨励賞
① 横浜国立大学大学院 国際社会科学研究科 准教授 相馬 直子氏
「変化する子どもと高齢者へのケアレジーム:東アジアの経験」他(英国ブリストル大学社会・政治・国際学研究科 講師 山下 順子氏他との共著)
② ピア・スタディング 代表 髙﨑 恵氏
若い世代への男女共同参画に関する広報・啓発の在り方を当事者の視点で考え、実践を重 ねる中でうまれた「つぶやきトークサロン」、ワークショップ等の活動
③ 特定非営利活動法人あんふぁんねっと 代表 軽部 妙子氏
「あんふぁんワールド」を通じた子育て支援「ノーバディーズパーフェクトプログラム」 等の活動
④ カシュパパ 代表 田所 喬氏
「パパのしゃべり場」等を通じ、パパが育児に積極的にかかわれる環境づくりを目指し、同時に、母親の育児負担軽減と自己実現・社会進出もサポートする活動
⑤ 特定非営利活動法人シャーロックホームズ 事務局長 東 恵子氏
子育て中のママからママへ送る子育て情報発信「プロジェクトベイ★キッズ」等の活動
⑥ 特定非営利活動法人石巻復興支援ネットワークやっぺす石巻 代表理事 兼子 佳恵氏
東日本大震災被災地において「生きがい仕事づくり」、「やっぺす!人材育成スクール」等を通じて子育て中の母親に就業機会を提供し、子育て・自立・雇用を応援する活動
⑦ 東北福祉大学総合福祉学部 助教 西野 毅史氏
「東北福祉大学感性デザイン課程 地域貢献プロジェクト」~被災地児童クラブでの「アニメーション・ワークショップ」を通じた子育て支援、及びその心理的影響の研究活動

4. 顕彰者応募作品等の概要及び選考理由

①最優秀賞
国際短期大学 専任講師 寺村 絵里子氏
(ア)応募作品等の概要
本作品は、政府統計の二次分析を通じて、日本の女性労働者の職種のうち3割と最大多数を占める女性事務職の賃金と就業行動の変化を検証したものである。分析の結果、男女雇用機会均等法施行後の1992年、1997年、2002年の3時点を通じ、女性事務 職の賃金は相対的に他職種に比べ低下し、男女の賃金格差は縮小していない。また、就業継続も進んだとはいえず、企業内における女性労働者の活用がいまだ十分ではないことを示している。高学歴化する女性事務職の活用について、さらなる検討が使用 者である企業側にも求められる、と主張している。
(イ)選考理由
自身の約10年間の企業勤務経験と出産による転職経験を基礎としつつ、「就業構造基本統計調査」を統計法改正後いち早く取り入れ、労働経済学の観点から実証的に説得力のある論文展開を行っている。その結果、男女雇用機会均等法施行後20年が経過 する現代においても、男女の賃金格差が縮小せず、高学歴化する女性を十分に活用できていない企業像を浮き彫りにした作品で、日本人口学会の「人口学研究」においても採択された水準の高い研究。女性の労働、とりわけ事務職の就業行動を実証的に取り上げたことが、高く評価された。
②優秀賞
東京福祉大学短期大学部 こども学科 専任講師 松木 洋人氏
(ア)応募作品等の概要
「子育て支援の社会学的インプリケーション」では、1990年代以降の子育て支援施策の展開において、子育ての責任を広く社会に帰属する「支援の論理」と、家族のみに帰属する「子育て私事論」という相反する論理が併存し、これが現代社会の近代性 と脱近代性の問題として捉えられることを指摘し、介護等も含めた「ケアの社会化」という位相の変動に注目すべきことを主張した。「ひろば型子育て支援における『当事者性』と『専門性』」においては、ひろば型子育て支援のスタッフが、子育てを経験した「当事者」であるという観点から「専門性」を主張する一方で、「素人」であることの専門性、すなわち、利用者とスタッフの間に対称性を生み出すための非対称な工夫が含まれることを指摘した。
(イ)選考理由
筆者は10年近くにわたって、「子育ての社会化」の視点から、各種の子育て支援サービス提供者へのインタビュー調査を行い、生協総合研究所の「子育て期女性のエンパワメント研究会」への参加を通じて、支援の実践と経験がどのような論理に支えられ ているかの把握を試みてきた。その結果として、子育て支援サービスを提供/利用することによって、人々が経験しうる困難とその対処法を提案しているところが、ユニークであり、高く評価された。
③奨励賞
① 横浜国立大学大学院 国際社会科学研究科 准教授 相馬 直子氏
(ア)応募作品等の概要
東アジアの5つの国(日本、韓国、台湾、香港、中国)における子育て、高齢者介護をめぐる社会的ケア政策に関わるコストが国家・家族・市場・非営利セクターに配分されるあり方(ケアレジーム)を比較したもの。その中で日本は、ケアダイアモンドの4つの部門のうち、国家が比較的広範な保育サービスを提供するなど、ケア提供に最も積極的であり、家族の負担軽減に寄与する反面、市場、非営利セクターの役割は低く、家族のグローバル化とケアワーカーのグローバル化を進めてきた韓国・台湾・香港の教訓は示唆に富む、と指摘している。
(イ)選考理由
筆者は、East Asian Database Project (EADP) 社会的ケアチームの一員として、東アジア社会政策研究ネットワーク(EASP)第5回国際会議(2008年11月)にて、上記5ヶ国における家族変化と社会的ケアの統計データを共有化し、定義の問題点、比較可能性、比較上の問題点を発表・討議した。第6回国際会議(2009年7月)では比較データを公開し、第7回国際会議(2011年8月)では上記5ヶ国の社会的ケアに関する比較分析発表を行うなど、継続的に国際的発信を行い、データ・ネットワーク構築に貢献し、ケアレジームという新たなアプローチを採用した点が評価された。
② ピア・スタディング 代表 髙﨑 恵氏
(ア)応募作品等の概要
若い世代への男女共同参画に関する広報・啓発のあり方を当事者の視点で考え、実践を重ねる中でうまれた日々の暮らしの中で個人の中に閉じ込められしまいがちな「つぶやき」を社会化するために発信する「つぶやきトークサロン」を開催したり、小学生を対象とした自己肯定感を育むための「物づくりワークショップ」を運営したりしている。
(イ)選考理由
若い世代への男女共同参画に関する広報・啓発を目的に「つぶやきトークサロン」、「物づくりワークショップ」等を立ち上げ、実践を積んできた。小学生対象のワークショップを実施することで、児童が男女共同参画について考える機会を与え、さらに、その保護者を通じて、男女共同参画の講座等への参加が少ない20代~40代に男女共同参画について周知していることも特徴であり、鹿児島県男女共同参画室等の自治体とも連携するなど、長期的に安定した活動を行っている点が評価された。
③ 特定非営利活動法人あんふぁんねっと 代表 軽部 妙子氏
(ア)応募作品等の概要
子育て支援ひろば「あん・はーもにー(交流の場)」、パパも一緒に家族で安心して遊べる「プラムクリークひろば」、食を通してホッとできる憩いの場「カフェ・ド・あんふぁん」の3つのツールを同スペースで提供できる「あんふぁんワールド」を運営。誰でも自由に出入り可能で、「ノーバディズパーフェクト」の精神で親のエンパワーメントを図り、安心できる居場所や交流の場を提供し、不安や悩みを抱える子育て家族のサポートをすることを目指している。
(イ)選考理由
男女共同参画の視点をいれた子育て支援プログラムが充実している。委託事業で親子のコミュニケーションが生まれる子育て支援ひろば「あん・はーもにー」、パパも楽しめるあそび場「プラムクリークひろば」、地域コミュニケーションの親子カフェ「カフェ・ド・あんふぁん」と同じ場所で個人の好みに応じて参加するプログラムを変えることができる。託児付きの「ノーバディーズパーフェクトプログラム」によって母親の自信を回復することにも注力している点が評価された。
④ カシュパパ 代表 田所 喬氏
(ア)応募作品等の概要
「父親が育児にかかわることが当たり前の世の中に」をスローガンとし、主に、八王子市親子つどいの広場を拠点として活動している。「パパのしゃべり場(月1)」、父親向けの屋内イベント(定期)、八王子市子育て関連イベントへの参加・メディアを通じて、父親育児の普及、育児力向上・育児理解の浸透、居場所づくりとネットワーク拡大、育児に積極的にかかわれる環境づくりを目指し、活動している。また、母親の育児負担軽減と自己実現・女性の社会進出も活動を通じて、サポートしている。
(イ)選考理由
毎月第2土曜日に子育て中の父親だけで集まる「パパのしゃべり場」を自ら立ち上げ、母親に偏りがちな育児負担の分担と父親の情報交換の場をつくるユニークな取り組み。現在は八王子市全体にネットワークを拡大し、他の都市にも伝播する努力を続けている。子育てとともに、男女共同参画の観点からも奨励したい貴重な活動であると評価された。
⑤ 特定非営利活動法人シャーロックホームズ 事務局長 東 恵子氏
(ア)応募作品等の概要
母親参画型子育て情報発信プロジェクト「ベイ★キッズ」は、情報不足からくる育児不安を解消するために、現代の子育て世代が利用しやすいツール(携帯電話・フリーペーパー)を活用して、必要な人へ必要な情報を確実に届けるとともに、一方的ではなく双方向性のある「顔の見える」情報提供をすることで、地域社会と母親たちをつなぐ役割を担う。また、母親たちの状況に応じた参画の機会を提供し、自分が暮らす地域でイキイキと暮らすことができるような活動や就労をサポートしている。
(イ)選考理由
子育てをしながら、自己実現のための仕事をしたい女性たちが、それぞれのライフスタイルに合わせて働ける職場環境を提供している。メルマガの会員は3000人で、子育てママにとって不可欠な地元密着情報を発信し、ママのニーズ、疑問にきめ細かく応えている。会員からの会費、企業からの広告宣伝費、国等からの調査費を財源に、活力ある質の高いサービスを続けることでNPOの価値を組織的に高めている。団体のテーマに新しさがあり、今後の発展に期待が高まる点が評価された。
⑥ 特定非営利活動法人石巻復興支援ネットワークやっぺす石巻 代表理事 兼子 佳恵氏
(ア)応募作品等の概要
東日本大震災を機に、本来子どもの出生を喜ぶべき母親の「壁が薄く、狭い仮設住宅生活」で、「子どもをかわいいと思えない。」、「子どもがいなければ。」などの精神的疲弊が問題になっている。「生きがい仕事づくり~内職仕事の提供~」や「やっぺす!人材育成スクール~再就職支援セミナー~」を通じて、子育て中の母親に就業の機会を提供し、地域とのつながりをもち「孤独な子育て」から「楽しむ子育て」に導く子育て・自立・雇用を応援している。
(イ)選考理由
やっぺすは、「一緒にがんばりましょう」の意。地元PTAメンバーの「環境と子どもを考える会」を母体に、復興支援団体「つなプロ」と合同で立ち上げたNPO団体。インターンシップを受け入れるNPOを発掘し、子育てが一段落した母親へ雇用機会を提供する。震災後、ボランティアへの感謝を込めて子どもたちが1万本のミサンガ作りを行うなど、10年、20年後、復興の担い手となるリーダーの育成を見据えた活動をしている点も評価された。
⑦ 東北福祉大学総合福祉学部 助教 西野 毅史氏
(ア)応募作品等の概要
「東北福祉大学感性デザイン課程 地域貢献プロジェクト」の一環として、東日本大震災の被災地の放課後児童クラブの低学年の児童を対象に、2012年の夏休み期間中に実施した「アニメーション・ワークショップ」の実践活動をまとめた。この活動では、子どもがアーティストと大学院生・大学生や必要に応じて心のケアに当たる心理士のサポートのもと、アニメーションの共同制作を行い、完成した作品を親子で鑑賞する流れの中で展開する「賞賛アプローチ」が効果をもたらした
(イ)選考理由
自身の研究テーマであるアニメーションを使って、震災後の子どもたちに夢を与え、自分に自信を持ち、将来の夢を持つ子どもたちをたくさん生んだことはアンケート結果で実証され、大きな結果を生んでいる。本ワークショップは、①共同制作、②多次元・包括的活動、③即時フィードバック効果、④賞賛アプローチといった4つの特徴で整理され、アニメ以外にも子どもの潜在的能力を賦活化させるヒントを与えている。研究と活動が一体となったユニークな作品であり、評価された。