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男女共同参画・
少子化

Gender equality,
the declining birthrate

男女共同参画・少子化 男女共同参画・少子化

顕彰結果

令和5年度男女共同参画・少子化関連研究活動の支援に関する顕彰事業

2023.12.08

第14回(令和5年度)男女共同参画・少子化関連顕彰事業 選考結果について

当基金の選考委員会の結果に基づき、受賞者を決定いたしました。
本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進、並びに少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すことを目的としております。

1. 顕彰の趣旨

本顕彰事業は、男女共同参画社会の推進及び少子化対策が、わが国の健全なる発展に極めて重要であるとの基本認識に立ち、若手研究者等の研究・活動の一層の推進を目指すものです。

2. 選考委員

(1)恵泉女学園大学 学長 大日向 雅美氏
(2)関西大学人間健康学部 教授 山縣 文治氏
(3)お茶の水女子大学基幹研究院 教授 永瀬 伸子氏
(4)中京大学現代社会学部 教授 松田 茂樹氏
(5)公益社団法人程ヶ谷基金 理事長 大河原 昭夫

3. 選考結果

(1) 論文部門

①最優秀賞
(ア)東京大学大学院教育学研究科 博士課程 木村 裕貴氏
「女性の稼得力が結婚形成と配偶者選択に及ぼす影響の変化」
(イ)湘南鎌倉医療大学 看護学部看護学科 講師 髙畑 香織氏
「生殖補助医療の治療早期における女性のストレス:混合研究法」
②優秀賞
(ア)東京大学大学院教育学研究科 日本学術振興会特別研究員PD 大久保 心氏
「子どもの時間的社会化の研究」
(イ)奈良女子大学アジア・ジェンダー文化学研究センター 協力研究員 飯田 愛紀氏
「How Do Traditional Gender Roles Influence Women's Lives in Taiwan?
An Investigation of Highly Educated Women's Willingness to Create Families」
(ウ)東京大学社会科学研究所 特任助教 百瀬 由璃絵氏
「埋もれたインターセクショナリティ:『障害者/健常者』の境界にいる女性」
(2) 活動部門

①優秀活動賞

(ア)NPO法人アンジュ ・ママン(理事長 吉原 安彦氏)(大分県豊後高田市在)
「地域共生社会の実現にむけて ~市民全員がプレーヤーのまちをめざして~」
(イ)NPO法人よろん出産子育て応援隊あんまぁ~ず
(理事長 内野 正世氏)(鹿児島県大島郡在)
「出産・通院・学びで使える宿泊施設の運営(Yadoo!プロジェクト)」

②活動賞

(ア)特定非営利活動法人エシカルプロジェクト
(代表理事 渡辺 美津子氏)(埼玉県本庄市在)
「フードロス削減と地域の自立支援」
(イ)牛田ウルトラマンキッズ(代表 柏田 潤子氏)(広島県広島市在)
「みんなでひとつ♥オムニバスでいこう!!」
(ウ)NPO法人mama's hug(代表理事 山本 加世氏)(神奈川県小田原市在)
「母親の家事育児の時間を軽減する研究及び、パパによる子育て研究papa's hug」
(エ)認定特定非営利活動法人こどもの里(理事長 荘保 共子氏)(大阪市西成区在)
「誰でも利用できる、遊び・休息の場、学習の場、生活・相談の場、助け合い生きていける場の提供。」

4. 顕彰者応募作品等の概要及び選考理由

〔論文部門〕

(1)最優秀賞
① 東京大学大学院教育学研究科 博士課程 木村 裕貴氏
「女性の稼得力が結婚形成と配偶者選択に及ぼす影響の変化」
(ア)応募作品等の概要
1960年代から1980年代出生コーホートの女性を対象に、稼得力が結婚形成及び配偶者選択に及ぼす影響の変化を検証し、男性の経済的地位低下と女性の両立見込み増大のいずれが女性の稼得力と結婚行動の関連を変化させる主要因なのかを明らかにした。分析の結果、1960年代から1970年代コーホートにかけて稼得力が結婚形成に及ぼす影響が負から正へと転じた一方、1970年代から1980年代コーホートではほぼ変化がなかった。配偶者選択に対する影響はいずれのコーホートでも概ね正だが、1960年代から1970年代コーホートにかけて効果が増大しており、男性の経済的地位低下が女性の稼得力と結婚の関連を転換させる主要因であることを示した。
(イ)選考理由
10年刻みの出生コーホートを用いて、稼得力と結婚行動の変化のタイミングを明確に特定しており、かつては稼得力の高い女性ほど結婚しにくかったが、稼得力の高い女性の方が結婚しやすくなったという興味深い研究結果を示した。また、精緻なパネルデータ分析を通じて、丁寧な実証を行い、明快な分析結果を出しており、量的研究の論文としての質の高さが評価された。家族要因や生育要因など稼得力の背景にある心理学の領域等に研究を深める余地もあり、更なる研究の発展を期待する。
② 湘南鎌倉医療大学 看護学部看護学科 講師 髙畑 香織氏
「生殖補助医療の治療早期における女性のストレス:混合研究法」
(ア)応募作品等の概要
不妊治療はストレスがかかることは知られているが、「どのストレス要因がメンタルヘルスの指標と関連しているか?」は明らかにされていなかった。本研究では、①生殖補助医療を開始した早期に女性が最も強く感じているストレス要因を分類し、②得られた分類とメンタルヘルス状態の差異を分析している。その結果、5つの要因が抽出された。うち最多はネガティブな要因である【終わりの見えない治療】で、70%に抑うつ症状を認めた。同じくネガティブな要因である【ひとりで抱え込む苦しみ】では、情報不足や意思決定支援を求めていることが明らかにされた。
(イ)選考理由
一般不妊治療よりも困難な生殖補助医療に挑戦する約350名を対象に、質的な分類と量的データを統合した混合研究法を用いた画期的な研究で、今後の不妊治療支援、特に心理面での支援の必要性について多くの示唆を与えたことが評価された。特に、このような大規模調査において、多数の対象者と信頼関係を構築し、調査することは、大きな困難を伴うものであり、それを丹念に成し遂げたことが評価された。なお、時間をかけてこのような大規模調査を行ったことに鑑み、この賞は個人に対する表彰ではなく、チームに対する表彰であることを付言したい。
(2)優秀賞
① 東京大学大学院教育学研究科 日本学術振興会特別研究員PD 大久保 心氏
「子どもの時間的社会化の研究」
(ア)応募作品等の概要
本研究は、子どもが時間の使い方や時間意識、時間のルールを身につけるプロセスである 「時間的社会化」に着目し、その教育格差の生成メカニズムにおける役割を検討した。小中学生を対象とした計量分析の結果、時間の使い方や時間意識、時間のルールには教育格差を維持・拡大させる効果は見られず、学校生活や園生活が階層再生産の抑制をもたらしている可能性が示唆された。一方、就学前の子どもを対象とした観察データの分析結果では、保育所 ・こども園での時間的社会化への出身世帯の影響も見られ、幼少期の生活習慣を検討する重要性を示した。
(イ)選考理由
これまで教育格差の生成メカニズムの研究で十分に検討されてこなかった、時間のルールやルーティンの社会化について、「子どもの時間的社会化」という観点から、教育格差や親への子育て支援の在り方を議論している点がとても新鮮で、切り口のユニークさも評価された。計量分析と観察データの分析の双方を活用し、展開された論文は大作で、その努力も評価された。
② 奈良女子大学アジア・ジェンダー文化学研究センター 協力研究員 飯田 愛紀氏
「How Do Traditional Gender Roles Influence Women's Lives in Taiwan?
An Investigation of Highly Educated Women's Willingness to Create Families」
(ア)応募作品等の概要
台湾は、東アジアにおいて高いジェンダー平等指数を誇っていることとは裏腹に、出生率は低く、婚外出産も稀である。数値に反映されないジェンダー格差や伝統的なジェンダーロールが影響を与え、結婚・出産意欲に影響を及ぼしているとの仮説に立ち、大卒以上の30代女性43名を対象に、半構造化インタビューを実施した。その結果、特に高等教育を受けた台湾の女性は、表面的な「平等」を享受し、「妻」「母」「嫁」といった伝統的なジェンダーロールを物理的に避けることで、自らの権利を保護しようとする傾向が明らかとなった。
(イ)選考理由
これまで日本の研究者の間ではあまり取り上げられて来なかった、台湾の高いジェンダー平等指数の実態について、鋭く切り込んだことが評価された。また、現地で調査を行ったことで、台湾では古い日本のような親族ネットワークが残っている点など、日本からみて分かりやすい論文であったことも評価された。今後は、より広い範囲でインタビューを行うとともに、対象者の属性分析を明確に行うことや、日本の少子化にどうプラスになるのかなどを明らかにすることを期待したい。
③ 東京大学社会科学研究所 特任助教 百瀬 由璃絵氏
「埋もれたインターセクショナリティ:『障害者/健常者』の境界にいる女性」
(ア)応募作品等の概要
日本の雇用環境・均等政策の問題点は、男女格差の是正を政策の中心としながらも、格差が単一であることを前提としている点である。一方、障害者の雇用政策では、男女格差は含まれていない。本稿では、健康上の問題がある女性が直面する経済的機会の損失をインターセクショナリティの概念を用いて明らかにした。その結果、健康上の問題がある者の経済的機会には男女差と障害者手帳の所持状況による差があり、障害者福祉制度を利用できない人がいること、障害者/健常者の境界線にいる女性は障害者手帳を持てず、経済的な機会を失いがちであることを明らかにした。
(イ)選考理由
インターセクショナリティの概念を用いて、日本における健康上の問題がある女性の問題を計量的に実証した初の試みである。中でもグレーゾーンに注目した点がユニークであり、示唆に富む新しい研究を良質なデータを用いてストレートに行ったことが評価された。今後は、職場や産業の違いや国の制度の有無によって賃金差がどのように生じているのかというメカニズムなど、深掘りされた研究に期待したい。

〔活動部門〕

(1) 優秀活動賞

① NPO法人アンジュ ・ママン(理事長 吉原 安彦氏)(大分県豊後高田市在)
「地域共生社会の実現にむけて ~市民全員がプレーヤーのまちをめざして~」
(ア)応募活動等の概要
地域子育て支援拠点事業を中心に、一時預かり、病後児保育、ファミリーサポート、家事サポート、多胎児サポート、利用者支援事業など多様な事業を子育て当事者のメンバーで展開している。これまでも、利用者のニーズに耳を傾け、行政や地域の架け橋として、様々な子育て支援事業を展開してきた。子どもが健やかに育つには、子どもに関わる人を支えること、また子育て支援には生活支援も不可欠で、様々な人が子どもに関わることは子どもの育ちには重要だと考え、子育て家庭を中心に傾聴しながら、相談されたら一緒に考えるという共感的理解を進めている。
(イ)選考理由
活動歴が長く、子育て家庭、行政、地域住民と一体となって、最善の子育て環境の提供を目指し、地道な活動を続けており、豊後高田市における平成30年の「高校生までの医療費および幼稚園、小中学校の給食費の同時無料化」を皮切りに、未来志向で官民連携による全国レベルの子育て支援を行っている。また、新たに独自で物価高にも対応できる取り組み(子育て用品、服のリサイクル)等も計画中であり、持続可能な団体としての活躍が期待される。
② NPO法人よろん出産子育て応援隊あんまぁ~ず
(理事長 内野 正世氏)(鹿児島県大島郡在)
「出産・通院・学びで使える宿泊施設の運営(Yadoo!プロジェクト)」
(ア)応募活動等の概要
人口約5千人の鹿児島県最南端の離島、与論島ではお産ができず、産婦人科だけでなく、大半の専門外来も常駐がないため、出産を含め、急を要する、または専門的な治療のたびに沖縄本島へ渡り、最低2泊3日かけて通院しなければならない。そのほか、スポーツ試合や受験、学校見学や研修などでも経済的負担は「当たり前」となっている。そこで、那覇市内に与論島民のための宿泊所を運営する「Yadoo!プロジェクト」を展開している。出産待機に加え、度重なる通院や長期入院の付き添い、学生の進学やオープンキャンパス、スポーツ交流試合の遠征にも利用されている。
(イ)選考理由
少子化対策として深刻な問題に対して正面から取り組んでいる。また、出産お祝いプロジェクトや制服リユースプロジェクト、大型育児用品マッチングサービスなど、年々活動範囲を広げている。活動者のほとんどが島の出身者ではなく、その方々が地元の人たちと交流して島を助けている点も評価された。また、クラウドファンディングを活用するなどの工夫もみられ、「お母さん」という意味の方言である「あんまぁーず」という名前もユニークで、元気を与えている。

(2) 活動賞

① 特定非営利活動法人エシカルプロジェクト(代表理事 渡辺 美津子氏)(埼玉県本庄市在)
「フードロス削減と地域の自立支援」
(ア)応募活動等の概要
災害等で発生した規格外野菜の救済活動をしながら、それを使用して食育活動を行っている。具体的には、子どもたち(養護施設の子どもを含む。)に自炊や調理の観点から自立支援を目指したり、経済的負担のある子育て世帯に向けてフードパンドリーを提供したりしており、それらの活動を通じて、地域のコミュニティを形成している。2021年は加工品研究・備蓄食の開発、2022年は子ども食堂、救済野菜のマッチング、2023年はフードパンドリー、親子キャンプ体験、コンポスト事業等、年々活動範囲を広げている。
(イ)選考理由
フードロスの削減が社会課題となる中、食を通して子どもたちの育成を行っており、同時に地域コミュニティづくりを達成している。食育により子育て環境の改善や少子化対策に貢献し、かつ、行政機関とも連携し、地域の持続可能な発展や社会的な課題の解決に向けた取り組みを行っている点が評価された。現段階では、災害時に傷ついた野菜の活用はシステム化していないため、今後、全国的なネットワークが広がることを期待している。
② 牛田ウルトラマンキッズ(代表 柏田 潤子氏)(広島県広島市在)
「みんなでひとつ♥オムニバスでいこう!!」
(ア)応募活動等の概要
障害者総合支援法制定前の1990年頃より、障がい児とその家族を支えるため、障がい児の行き場の創設、子育て相談、交流会の開催などを通じて、家族の孤立化の防止、障がい児とその家族が地域との繋がりを持ち、地域で生活できる基盤づくりを図るとともに、近年では講演会、学習会、地域交流会等を実施している。障がいの有無や種別を問わず、一緒に活動したいという思いを大切にしながら、障がい児とその家族に寄り添った活動を多面的に継続、拡充し続けている。
(イ)選考理由
活動歴が長く、障がい児の家族が地域社会から孤立することなく子育てができるよう、多様な活動を継続して行っている点が評価された。また、障がい児に多くの経験の場を提供し、互いに褒めあい自尊心を高める環境をつくるなど、障がい児の自立に向けた支援に取り組んでいる点や、地域ボランティアや民生委員・児童委員、社会福祉協議会、地元文化財団等とも連携して、地域に根差している点も評価された。今後も長く多面的な活動支援を続けることを期待している。
③ NPO法人mama's hug(代表理事 山本 加世氏)(神奈川県小田原市在)
「親の家事育児の時間を軽減する研究及び、パパによる子育て研究papa's hug」
(ア)応募活動等の概要
抗うつ作用や抗ストレス作用のあるベビーマッサージをはじめとする産前産後ケアに関するワークショップなどの開催やベビーシッター資格認定講座を開催している。これまでに各種資格取得者は約420人、ワークショップ開催は約810回、約6,000人が参加している。新型コロナウイルスの影響により、コミュニケーションの機会が減少したことも一因となり、産後うつになる母親が増えている。さらには母親のうつが父親にも連鎖する傾向が見られたことから、パパの育児研究所「papa's hug」を2022年に開設した。
(イ)選考理由
産前産後ケアはとても大切な活動であり、これまでに約6,000人がワークショップに参加しているなど、当団体の活動は子育て世代から継続的に支持されている。ベビーシッター資格を取得した30代男性であるパパシッターと女性スタッフの共同研究により、家事育児に追われている女性と、家事育児には抵抗感のある男性の双方の視点を取り込むことで、うつの防止や早期の社会復帰に貢献している。父親の育児参画の促進に向け、「papa's hug」を開設するなど、アイデアの広がりも評価された。
④ 認定特定非営利活動法人こどもの里(理事長 荘保 共子氏)(大阪市西成区在)
「誰でも利用できる、遊び・休息の場、学習の場、生活・相談の場、助け合い生きていける場の提供。」
(ア)応募活動等の概要
主に片親で虐待を受けた子どもたちに居場所を提供している。トラウマを持った子どもたちの自立援助であり、時間をかけて上からではなく同じ目線でサポートすることを重視している。主な活動内容は、学童保育(こどもの遊び、学び、休息の場)、ファミリーホーム(こどもの生活の場)、自立支援ホーム(若者の生活の場)、緊急一時宿泊所である。また、自主事業としてエンパワメント事業、社会的養護アフターケア事業、中高生居場所事業を行っている。
(イ)選考理由
2021年のこどもの里利用児童者183名のうち、24%は障がい者、14%は親が外国籍と、年齢、障がいの有無、国籍に関係なく、「誰でも利用できる安心な場」を長期間地道に提供し続けている点が評価された。キャンプやハイキング、クリスマス会等のイベントの実施、またデザインに工夫を凝らされた、こどもの里だよりや月ごとのスケジュールのお知らせ等を発行しており、継続的な努力が伺える。施設の生活環境に課題がある中、改善によって今後の発展を期待している。